交通事故の被害者が、会社の代表取締役であったり、企業の中で特に重要な役割を果たしている方であった場合、被害者ご本人だけでなく、その企業にも大きな損害が生じてしまうことがあります。
その場合に、被害者が勤務する企業は、加害者に対して、企業が受けた損害を請求できるかどうかが問題となります。この問題は、間接損害又は企業損害と呼ばれて議論されている問題です。
この問題について、最高裁判所は、かなり厳格な限定を加えた上で、一定の場合には会社等の企業による損害賠償請求を認めています。
具体的には、最高裁は、その会社が実質的には被害者個人で営業しているものであり、その被害者に代替性がなく、被害者と会社が経済的一体関係にあるという場合に、会社による損害賠償請求を認めると述べたことがあるのです。
例えば、社員が数名の小規模な会社の社長が交通事故の被害で休業したような場合には、先程の判例に当てはまる可能性があります。
ご質問のケースでは、交通事故の被害者が代表取締役という重要な地位にある方ですので、その方の代わりが務まる方が他にいないとすれば、代替性がないと判断される可能性があります。その上で、実質的に被害者個人による営業と変わらないといえれば、会社による損害賠償請求が可能になります。
このように、裁判所の考え方によれば、会社が交通事故の加害者に対して損害賠償請求できる場合は、かなり限られており、簡単には認められないものといえます。