執筆者弁護士 山本哲也
このような死亡事故の場合、損害賠償は請求できる?
1.死亡事故の慰謝料
死亡事故が発生した場合、被害者は加害者に対して様々な慰謝料を請求する事ができます。その中でも特に金額にが大きくなるのが『死亡逸失利益』と『死亡慰謝料』です。
死亡逸失利益とは
死亡逸失利益というのは、被害者の方が交通事故にあわなかった場合にその先将来的に得ていたであろう利益のことを指します。
通常の場合ですと、その方の平均収入と実際に働いていたであろう年齢までの期間を基礎として算定される額から、必要となったはずの生活費を差し引いた金額になります。
この金額というのは、この先の数十年かけて得るはずだった利益を一括して前払いで支払われますので、中間利息が差し引かれます。
これにはもらうはずだった年金も含まれます。
死亡慰謝料とは
慰謝料とは痛みや悲しみなどの精神的な損害に対する賠償のことですが、死亡慰謝料は交通事故によって亡くなったことについての慰謝料です。
被害者のおかれていた立場によっておおよその基準が決められており、弁護士基準では下記の通りです。
被害者の立場 | 弁護士基準 |
一家の支柱(大黒柱) | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他(独身者、子ども、高齢者など) | 2000万円~2500万円 |
上記金額は弁護士基準での金額となっていますので、保険会社が提示してくる金額は上記よりも低い場合がほとんどです。
近親者の慰謝料について
そして、死亡事故の場合ですと亡くなられた本人のほかに、ご家族の精神的苦痛・損害に対して請求できる「近親者の慰謝料(近親者固有の慰謝料)」というものがあります。
この慰謝料を請求できるのは被害者の配偶者・子ども・父母のみとなっており、金額については明確な基準がありません。
事案によって請求できる金額も変わってきますが、山本総合法律事務所が解決した事例では200~500万円が認められています。
死亡慰謝料が増額されるケース
また、事故態様が悪質なケース(例えば、飲酒運転による事故の場合)や加害者の事故後の行動が特に悪質であるケース(例えば、加害者が証拠隠滅行為を行った場合)、そうでない場合と比べて死亡慰謝料が増額される場合があります。
2.葬儀費用について
交通事故で亡くなった方の葬儀、墓石、仏壇等の費用は、相当な範囲で加害者側に請求することができます。
交通事故の被害者が亡くなってしまったときには、葬儀や墓石・仏壇など、様々な費用がかかってしまいますものですが、こういった葬儀関係費用を加害者側に請求できるかを考える上では、いくつか問題があります。
まず、人はいずれ亡くなる以上、葬儀関係費用は事故がなくてもいずれ必要になるものとして、加害者側に請求できないのではないかという問題があります。
しかし、実務ではそのような考え方はとられず、葬儀関係費用は事故によって被害者が亡くなったからこそその時に支出しなければならなくなった費用であり、加害者側に請求できるとされています。
次に、葬儀費用以外に、墓石や仏壇などの費用も請求できるのかが問題になります。
この点については、墓石を建てたり仏壇を購入することも、慣習上、葬儀を行うことと同じように通常必要なことですので、墓石や仏壇などの費用も、相当な範囲で葬儀関係費用として請求することができます。
請求できる金額
弁護士基準では150万円で認められるケースが多く、自賠責保険基準では100万円が限度とされています。
この点については、実際にかかった葬儀関係費用がいくら高額でも全額が請求できるというわけではありません。つまり、現実にかかった金額のうち、社会通念に照らして相当な範囲だけを請求が可能です。
3.しばらく入院した後に亡くなった場合
交通事故の被害者となった方が、重傷を負って入院して、その後しばらく経ってから亡くなるというケースがあります。このような場合、死亡慰謝料という慰謝料と、死亡までの入通院慰謝料も請求することができます。
被害者が怪我をして入院した場合には入通院慰謝料という慰謝料が請求できます。これは、入院しなければならないような怪我をしたことについての慰謝料で、基本的には入院した日数を目安に金額が決まります。
入院の日数が長期であるほど、金額も高額となります。
死亡慰謝料と入通院慰謝料を両方請求できる?
交通事故の被害者が、しばらく入院した後で亡くなった場合には、死亡慰謝料と入通院慰謝料の両方を請求できるのか、と疑問を持たれる方もいるかも知れません。
この場合、死亡慰謝料と入通院慰謝料の両方を請求することができるとされています。
つまり、事故に遭って入院してから死亡するまでの期間については、傷害交通事故の場合と同様に入通院慰謝料を算定し、さらに、被害者が亡くなったことに基づく死亡慰謝料を請求できるということになります。