執筆者弁護士 山本哲也
赤本とは何ですか?
東京地方裁判所の実務に基づいた損害額の算定基準が示されているほか、参考になる裁判例が掲載されている
「赤い本」とは、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」のことです。「赤い本」には、東京地方裁判所の実務に基づいた損害額の算定基準が示されているほか、参考になる裁判例が掲載されています。
また、公益財団法人日弁連交通事故相談センター発行の「交通事故損害額算定基準-実務運用と解説-」は、通称「青本」と呼ばれていますが、こちらも、交通事故による損害額を算定するにあたっての基準が示されているほか、基準についての解説や参考となる裁判例が掲載されています。
交通事故による賠償額算定の必読書
赤い本や青本の基準は、交通事故による損害額を算定・検討する際の必読書と言われており、「裁判基準」や「弁護士基準」と言われることもあります。
ただ、赤い本と青本では、それぞれの編集者が裁判例の傾向などを参酌した上で算定基準として公表しているため、内容は似ていてもわずかな違いが生じます。
一例を挙げると、後遺障害等級14級の場合の後遺障害慰謝料について、赤い本では110万円、青本では90~120万円とされています。
赤い本や青本の基準は他基準よりも高い
現在は、保険会社が赤い本や青本の基準を無視した保険会社独自の基準(いわゆる任意保険基準や自賠責基準)により示談を提示してくる場合が多いのが現状です。
ほとんどの場合、任意保険基準や自賠責基準により算定された損害額は、赤い本や青本の基準より算定された損害額よりも低く、全体の金額に大きな差が出ることもしばしばあります。
保険会社の提案を安易に受け入れて示談をしてしまいますと、適正な賠償を受ける機会を失うことになってしまいますので、注意が必要です。
赤い本や青本の基準はあくまでも一つの目安であり、裁判で必ずそれら本に載っているのと同額の慰謝料が認められるというわけではありませんが、弁護士が交渉する事で、それに近い金額やほぼ同額の基準で示談可能な場合もあります。