むちうち(頚椎捻挫)になったら知ってほしい5つのこと
- 執筆者弁護士 山本哲也
交通事故被害者が抱える症状として、特に多いものが「むちうち」です。
むちうちでもケースによっては後遺障害が残る可能性もあり、後遺障害等級の認定を受けると、賠償額が大幅にアップします。
また、むちうちは保険会社とトラブルになる事例も多いので、不利益を受けないための対処方法を知っておきましょう。
今回はむちうちになった被害者の方が知っておくべき5つの知識を弁護士がお伝えします。
目次
むちうちの種類や症状
むちうちにはいくつかの種類があり、内容によって治療方法や期間も変わってきます。
むちうちは医学的な診断名ではない
実は「むちうち」は一般的な呼称であり、医学的な診断名ではありません。
事故などの外傷により「頚椎」が衝撃を受けて軟部組織や神経、骨などが傷つく症状をまとめて「むちうち」とよびます。ひとことで「むちうち」といっても、軽傷の場合から重傷の場合までさまざまです。
一般的には次のような診断を受けるケースが多いです。
- 頚椎捻挫
- 外傷性頚部症候群
他にも、以下を発症するケースもあります。
- 椎間板ヘルニア
- バレ・リュー症候群
- 神経根型
- 脊髄損傷
- 脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)
むちうちの症状
むちうちになると、一般的に以下のような症状が出ます。
- 首が痛い、動かせない、動かしにくい
- 肩や背中がこる
- 腕や手がしびれる
- めまいや耳鳴りがする
- 頭痛、頭重感がある
むちうちの治療方法、通院先、通院期間
むちうちになったら、患部を動かさずに安静にして治癒を待つのが基本の治療方法です。
痛みがある場合、冷湿布などで冷やして炎症を抑制します。
ひどい痛みがあれば、薬を服用したり場合によっては「神経ブロック注射」をしたりするケースもあります。
炎症が収まり急性期をすぎると、リハビリを開始するケースが多く、温熱療法、電気療法の他、首の牽引療法を実施するケースもあります。
この段階になると、整骨院や鍼灸院に通う人も多くなります。
椎間板ヘルニアや脊髄損傷などの重症なケースでは手術が必要となる可能性もあります。
むちうちの治療期間
軽いむちうちの場合には2、3か月程度通院すれば症状が良くなるケースもあります。
ただし症状が頑固な場合、6か月以上通院しても症状が改善しない可能性があります。
どの程度まで通院が必要かは医師の判断によりますので、症状があるうちは通院を継続しましょう。
むちうちになったときの通院先
むちうちになった場合、基本的には「整形外科」が対応の診療科となります。
ただしバレ・リュー症候群の場合には「ペインクリニック」に通う必要があります。
脊髄損傷や脳脊髄液減少症の場合、脳神経外科を受診しましょう。
整骨院、鍼灸院に通う場合の注意点
むちうちの通院先といえば、整骨院や鍼灸院を思い浮かべる方もおられるでしょう。
しかし事故後、整形外科を受診せずにこれらの治療院のみに行くのはおすすめではありません。
整骨院や鍼灸院の先生は医師ではなく、むちうちに必要な治療を受けられない可能性があるからです。
レントゲンやMRI検査ができませんし、投薬もできません。
また整骨院や鍼灸院では診断書を作成できないので、後遺症が残っても後遺障害認定を受けられなくなってしまいます。
まずは整形外科を受診する
交通事故被害に遭い身体に何らかの症状がある場合、まずは整形外科などの「病院」を受診して医師による診断と治療を受けましょう。
症状が落ち着いてきた段階で、医師の許可をとって整骨院や鍼灸院に通ってもかまいません。
医師の同意を取らずに自己判断で整骨院などに通った場合、保険会社から治療費や慰謝料の支払いを断られる可能性があるので、必ず事前に医師と保険会社に知らせるようにしてください。
むちうちでよくあるトラブル
交通事故でむちうちになると、以下のようなトラブルが発生するケースがよくあります。
自分の保険会社に交渉を任せられない
むちうちの場合、追突事故によって受傷される方が大半です。
そして、追突事故の場合は過失割合が0対100になるケースがほとんどで、その場合はご自身の任意保険会社の担当に交渉を任せることができません。
過失がゼロの場合、保険会社は間に入ることができないからです。
相手の保険会社とのやり取りをすべて自分自身で行うことは大きな負担となりますし、精神的なストレスにもつながります。
また、相手は交渉のプロですので、知らず知らずのうちに不利な条件を提示され、よく分からないままに受け入れてしまう可能性もあります。
まずは治療に専念するためにも、なるべく早めに弁護士に相談して代理人となってもらう方がメリットが大きいと言えるでしょう。
治療費の打ち切り
むちうちでよくあるのが治療費の打ち切りです。
むちうちになると、リハビリに時間がかかるため半年以上の通院期間が発生するケースも少なくありません。
すると保険会社が「そろそろ症状固定して、示談交渉を始めましょう」などと打診してきます。被害者が通院の継続を希望しても、一方的に治療費の支払いを打ち切られてしまうのです。
このような場合、保険会社の言いなりに治療をやめるべきではありません。まずは医師に「症状固定」または「完治」したのか尋ねてみてください。
事故後の治療は症状固定または完治まで続けるべきだからです。治療費や慰謝料、休業損害などの賠償金も症状固定または完治までの分を請求できます。
医師が「引き続き治療が必要」と判断すれば、保険会社が治療費を打ち切っても通院を継続すべきです。自費診療では負担が高額になるので、自分の健康保険を適用するとよいでしょう。
適切な方法でないと後遺障害認定を受けられない
むちうちになると、治療を続けても痛みやしびれなどの違和感がとれず後遺症が残ってしまう事例も少なくありません。
すると後遺障害認定を受けられる可能性があります。
後遺障害が認定されれば、されない場合と比べて賠償額は大幅にアップしますので、適正な賠償金を受け取るためにも後遺障害認定の申請を行うべきです。
ただし、むちうちの後遺障害である「痛み」や「しびれ」を客観的に証明するためにはノウハウが必要です。
骨折などのケガであれば明らかな他覚症状がありますが、痛みやしびれは自覚症状であるため、審査機関にその存在を証明しないといけないからです。
むちうちで後遺障害認定を受けるには、専門的な知識と工夫が必要となります。弁護士がアドバイスを致しますので、迷われたときにはご相談ください。
むちうちで後遺障害が認定されるポイント
むちうちでも後遺障害認定を受けられる可能性があります。
多くの場合、認定される等級は14級で、症状が重度だった場合には12級が認定されることもあります。
後遺障害認定を受ければ、支払われる慰謝料や逸失利益の金額も高額になります。
適切な後遺障害診断書の作成
後遺障害認定を受けるためには、加害者の自賠責保険に申請を行います。(窓口は自賠責保険会社ですが、実際の審査は損害保険料算出機構という専門機関が行っています。)
申請時にはたくさんの書類が必要で、中でも「後遺障害診断書」という診断書が重要です。
後遺障害診断書は症状固定になったら主治医に作成してもらう必要があり、その内容によって審査結果が大きく左右されます。
むちうちで後遺障害が認定される基準を専門機関は明らかにしていませんが、これまでの経験から、どのような症状が残っているのか、通院の期間や頻度、他覚症状の存否、適切な後遺障害診断書が作成されているかどうかが結果に繋がると感じています。
特に重要な後遺障害診断書の作成には様々なポイントがありますが、作成する医師によっては後遺障害に関する知識が薄いために、患者が訴えている症状を正確に記載しなかったり、必要な検査を行わないなどのケースもあります。
なるべく早い段階から専門知識を持った弁護士に相談し、後遺障害認定を見据えた対策をとっておくべきでしょう。
また、適切な後遺障害診断書に加え、MRIなどの画像検査結果に異常所見が認められると認定の可能性が高まりますが、むちうちの症状でこのような他覚症状を立証できるケースは多くありません。
認定の可能性を高めるために、神経学的検査(ジャクソンテスト、スパーリングテスト等)を受け、後遺障害診断書にその結果を記載してもらう事も重要です。
相手の保険会社任せにしない
後遺障害申請の方法は2つあり、相手の保険会社に任せるパターン(事前認定)と、被害者自身が行うパターン(被害者請求)があります。
事前認定は保険会社にすべて任せる事ができますが、適切な後遺障害が認定されるための資料集め等、被害者が有利になる行動をとってくれる可能性は低いといえます。
相手の保険会社任せにせず、専門知識を持った弁護士に依頼して、ご自身の代わりに被害者請求を行ってもらうほうが認定の可能性は高まるでしょう。
結果に納得できないなら異議申立てを
後遺障害等級の認定申込みをした後、数ヶ月程度で申請者に宛てて審査結果が郵送されます。(早いケースでは数週間~1ヶ月程度のこともあります。)
後遺障害等級が認定されれば「後遺障害等級の認定通知」が、認定されなければ「非該当通知」が届きます。
この結果に納得できない場合には、審査機関に「異議申立て」を行い、もう一度審査を行ってもらうことができます。
ただし、異議申立てを行って結果が変わる可能性は低いと言わざるを得ず、特に非該当となった場合に異議申立てで等級が認定されるケースは多くありません。
結果を変えるには最初の判断を覆せるほどの資料(証拠)を入手して提出する必要があります。
認定理由によってどのような資料が必要になるかが変わってきますので、交通事故の後遺障害に詳しい弁護士にご相談ください。
むちうちで高額な賠償金、慰謝料を受け取るためのポイント
以下では交通事故でむちうちになった場合に、できるだけ高額な賠償金や慰謝料を受け取るためのポイントをお伝えします。
ポイント① 適切な通院先を選び必要な検査を受ける
むちうちになって十分な治療を受けて入通院慰謝料や休業損害を払ってもらうには、症状に応じた適切な通院先を選ぶ必要があります。
まずは整形外科を受診して医師の診察を受け、レントゲン撮影や、必要であればMRI検査を受けましょう。主治医の許可が取れれば接骨院・鍼灸院にも通院する事ができます。
十分な治療を受けるためにも、なるべく定期的に継続して整形外科への通院を続けます。
痛みやしびれ等の後遺症が残ってしまったら、MRIに加えて神経学的検査もしっかり行ってもらい、後遺障害等級認定に活かしましょう。
ポイント② 後遺障害認定を受ける
むちうちでも後遺障害認定を受けると、後遺障害慰謝料や逸失利益が払われるので大きく賠償金額がアップします。
後遺障害等級認定では後遺障害診断書の内容が重要となります。
作成前に弁護士に相談し、適切な記載がされた後遺障害診断書を作成してもらうようにしましょう。
必要十分な資料を揃えて万全の体制で手続きを進めるためにも、後遺障害認定は弁護士までご依頼ください。
ポイント③ 弁護士基準で賠償金を計算する
3つ目は、「弁護士基準で賠償金を計算すること」です。
交通事故の賠償金計算基準には複数あり、被害者が自分で示談交渉する際には低額な任意保険基準が適用されてしまいます。それでは慰謝料や休業損害などの賠償金を減額されてしまう可能性が高まります。
弁護士に依頼して高額な弁護士基準で計算すると、賠償金が大きく増額されるので、示談交渉は弁護士へ任せるのが得策といえるでしょう。
まとめ
交通事故でむちうちになってしまった場合、まずは病院で診察を受け、適切な治療を受けてください。
治療を続けても痛みやしびれなどの後遺症が残ってしまったら、後遺障害認定を受けて賠償額をアップできる可能性があります。
また、保険会社の提示してくる賠償案は、ほぼ全件と言っても良いほど低額であり十分な金額とは言えません。保険会社から金額の提示が出たら、必ず弁護士に相談して金額の査定を受けてください。
「むちうち程度の事故で弁護士に相談するなんて・・・」と感じられる方もいらっしゃいますが、損をしないためにも、なるべく早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
群馬県の山本総合法律事務所は、2007年の創立以来、「交通事故被害者の救済のため、妥協しない」をモットーに県内外の皆様の交通事故トラブルを解決してきました。
交通事故直後からご相談をお受けし、治療や休業補償、後遺障害の申請等で被害者のサポートを行っています。
また、ご依頼をお受けしたほぼすべてのケースで賠償金を増額させ、むちうちに関しては2倍以上に増額した事例も多数あります。
事故でむちうちになってしまった方は、ぜひとも一度ご相談ください。